隣の不器用王子のご飯係はじめました
その言葉に喜んだ両親は、アパートへ帰ろうとする私に大量の野菜を詰めた袋を手渡してきた。
駅までは車で送ってもらうことにしたものの、重いし嵩張るしで本当に大変。
というか、私は隣の部屋の二人に夕ご飯を作ってあげていることを話していないのだから、一人用として渡したはずなのに、どうしてこんなに量が多いんだろう。
でもまあ、これだけたくさんの野菜があると何を作ろうかなあと夢が広がる。
……この大きいナスは煮びたしにしようかな。前に遠坂くんが美味しいっていってくれてたし。
私は無意識のうちに遠坂くんのことを考えていることに気が付いて顔が熱くなる。
肉じゃかを持って行ったあの日以来、毎日当たり前のように会っていたから、二週間ほど会っていないだけでもうずいぶん長いこと会っていない気がする。
そんなことを考えながら、電車を乗り継ぎ二時間半。
最寄りの駅からは重い荷物を持ってアパートへと歩く。