隣の不器用王子のご飯係はじめました
考えてみたら、こうして花火大会の会場近くまで来て大きな花火を見たことなんて、数えるほどしかない。
実家の周りは高い建物なんかがないから、付近でやっている花火はだいたい家から見えたのだ。
「綺麗……」
ドンドンっと連続で上がっていく花火に、私はほうっとため息をもらす。
……こうして花火を好きな人と見てる……何か、すごいな。
少し前の私は、こんなシチュエーション一瞬たりとも想像していなかった。
私は、こっそりと花火の光に照らされる遠坂くんの顔を盗み見た。
まっすぐ真剣な表情で花火を見ている彼。
好きだなあ、と改めて思う。
ねえ遠坂くん。
私、こうして遠坂くんと一緒に花火を見られて、すっごく嬉しいんだよ?
遠坂くんは昨日、私と花火を見に行くのは嫌じゃないと言ってくれていた。でも、きっとそんなに乗り気なわけでもなかったよね。
今日こうして花火を見に来て良かったって、少しでも思ってくれてたら嬉しいな。