隣の不器用王子のご飯係はじめました
「えっと……もっと食べる?」
そもそも私はレナさん一人に渡すつもりで持ってきていたので、鍋には大した量が入っていなかった。
三人分の器に盛り付けたらもう空っぽになっているはずだ。
私が尋ねたことで、ようやくこちらの存在を思い出したらしく、遠坂くんは少し気まずそうな色を浮かべた。
気まずそうながらも──こくりと確かにうなずいた。
「あ、じゃあ作った分もう全部持ってくるね」
私はそう言って席を立ちながら、笑いを堪えるのに必死だった。
どうしよう、絶対クールな学園の王子様に相応しい形容詞じゃないんだけど……。
遠坂くん、可愛いかも。
◇
何と、完全に作りすぎたと思っていた肉じゃがが一日で全部なくなってしまった。
あの後も遠坂くんは実に美味しそうに食べ続け、見ているだけで幸せな気持ちになった。