隣の不器用王子のご飯係はじめました
……まあもちろん、現実では遠坂くんが“ヒロキ”みたいに私のことを好きになってくれることなんて都合のいいことないのだろうけど。
そう思うと一気に悲しくなってきた。
この漫画、ちゃんと自分で買ったら大事に保存しよう。
私は密かにそんな決意を固める。
「わあい。麻婆豆腐って久しぶりだな。ひろいないのに作ってくれてありがと!」
レナさんがニコニコしながら、朗らかな声で言った。
「いえ……人数分作る癖がついちゃって」
「そっか。ねえありりん、もういっそ嫁に来ない?……あたしの」
「え、レナさんのですか」
「あー、やっぱ嫁になるならひろの嫁が良いのかあ」
「じょ、冗談やめてください……」
ほら!やっぱりレナさん私の気持ち色々わかってて言ってる!
顔が熱くなるのは麻婆豆腐の辛さのせいだとでもアピールするように、私は冷えた水を飲み干す。