隣の不器用王子のご飯係はじめました
「じゃあいっそ杉野と付き合っちゃえば?」
由梨が私の思いを見透かしたかのように言った。
「在花が杉野と付き合ったら、わたしは改めて遠坂くんにアピールしようかな。考えてみたら、推しだから付き合いたくないってのも変な話だし。あの国宝級イケメンが彼氏なんてやっぱ最高だもん」
「それはっ……!」
パッと顔を上げて隣を歩く由梨を見る。
彼女は口元に優しそうな笑みを浮かべていた。
「それが答えなんだと思うけどね。ま、もうちょっと考えてみたらいいんじゃない?」
「……」
私はうつむいて静かに息をつく。
さっき、由梨が遠坂くんの彼女になるというのを想像したら、一気にモヤモヤが押し寄せてきたのだ。
傘に当たる雨の音が激しくなってきた。
「雨強くなってきた。在花、急ごう」
由梨がそう言って速足になったことで、それに付いていくために私はいったん考えるのをやめた。