隣の不器用王子のご飯係はじめました



確かそんなことを言って、残りのクッキーを全部渡した気がする。

本当にただ渡すだけ渡して帰ってしまったから、その男子生徒の顔までは覚えていなかったけど……。



「あれ、遠坂くんだったんだ……」

「あの日は昼休みに立て続けに呼び出されて、学食で昼飯買いそびれてたんだ。あの日以来、昼休みに用事があるときも必ず先に食べる物は確保するようにしてる」



そっか、それでお腹を空かせてたのか。

今まですっかり忘れてたとはいえ、一年以上越しに男の子の正体が分かったのが嬉しい。




「あれ、でも私すぐに帰ったと思うし、名前言ってなかったよね?」

「クッキーすごく嬉しかったから、次会ったらお礼言おうと思ってて……、でも知っての通りこの性格だから、あの後小野山さんのこと見かけても話しかける勇気があるはずもなく。……で、様子をうかがってるうちに、名前を呼ばれてるところを何回か見て知った……って感じです」



< 184 / 251 >

この作品をシェア

pagetop