隣の不器用王子のご飯係はじめました
俺があまりに予想外なことを言ったために酔いが冷めたのか、姉さんは急に真面目な声になった。
『歓迎はされないと思うよ』
「わかってる」
『何なら話すまでもなく追い返されるかも』
「そうしたら諦めてそのまま帰る。交通費はもったいないけど」
『そう……』
歯切れが悪く、まだ反対したそうなのは伝わってきた。
それでもしばらくの沈黙の末、姉さんは『わかった』と小さく言った。
「じゃ、俺もう寝るから。旅行楽しんで」
『ん。おやすみ』
俺は通話を切って、ふっと息を吐いた。
母に会うのは何年ぶりだろう。
皿の二枚や三枚は投げつけられる覚悟はしておいた方が良いだろうか。
◇
私が目を覚ましたときには、もう遠坂くんは起きていた。
乾かした制服に着替えて、ミュートにしたテレビを見ている。