隣の不器用王子のご飯係はじめました
「小野山さん?」
「はい、聞いてます!」
私の無駄に威勢のいい返事を聞いて、遠坂くんはようやく私からパッと手を離した。
「朝ごはんはいいよ。学校近くのコンビニで何か買う。早いけど学校もう開いてるはずだから先に行くね」
「え、何で?」
「万が一誰かに一緒の部屋から出てくるの見られたらまずいでしょ?」
確かにその通りだ。
どうせ今日も由梨が迎えに来るし。
それに今日は、昨日の大雨が嘘のように快晴だ。
なら確かに、引き留める理由もないよね。
「わかった。じゃあ、また学校で」
「うん」
遠坂くんは荷物を持って部屋を出ていった。
私は残された部屋で一人分の朝ごはんを準備する。
この部屋では一人というのが通常の状態なのに、遠坂くんがいなくなった瞬間、ずいぶん寂しい場所に変わってしまった気がした。