隣の不器用王子のご飯係はじめました
「俺は、悪いけど杉野のことは応援できない」
「……それはつまり?」
「俺も小野山さんのことが好きだから。気を許しているように見えるなら、きっとそれは彼女が俺にとって特別な存在だから……だと思う」
誰かを好きになるというのは、きっとどこまでも自分勝手な感情なのだろう。
相手を困らせるかもしれないとわかっていても、簡単に無くせるものじゃない。今ならわかる。
「別に、杉野が小野山さんが付き合うのを阻止したいとかいうわけじゃない。ただ、俺は応援できないってだけ」
心の中だけでその気持ちを封じ込めて、後になって封じ込めきれずに溢れ出てきてしまうぐらいなら、言葉にするぐらいはしておいた方が良いと思った。
「……はあ、正直かよ……オレに勝ち目なんてねえのにな」
杉野が聞き取れないような小さな声でぼそりと呟いた。
「え?」
「何でもない。……あ、もうこんな時間か。朝練始まるから走るわ。じゃあな遠坂」
もう話すことはないと判断したのだろう。
眠気はもうほとんど無くなってしまった。