隣の不器用王子のご飯係はじめました
「……とか何とか言って、未練がましく食い下がってやろうと思ってたんだけどなー。在花ちゃんにそんなに辛そうな顔されるとそれもできないな」
「私、そんな辛そうな顔してる?」
私に聞かれて、杉野くんは「うん」と肯定して顔を上げた。
「もしかして振られてるオレより辛いんじゃないかって思うぐらい。オレが未練がましいこと言うたびにそんな顔させちゃうのかと思うと……もう諦めるしかねえよなって気になる」
「……」
「ま、在花ちゃんのそういう優しいとこも好きなんだけど」
「……ありがとう」
また胸がキュッとなる。
ああ、きっとこのキュッとなったときの表情が辛そうなんだ。
杉野くんは、今にも泣きそうに思える弱々しい笑みを浮かべている。
「今日の朝、遠坂に会ったんだ」
「え?」
「偶然見かけてさ。オレは在花ちゃんのこと好きなんだってこと言ってやった。悔しかったから『脈ありだと思う』だなんて嘘もついたけど。……そしたらあいつ、どんな反応したと思う?」
「わ、わかんない……」