隣の不器用王子のご飯係はじめました
恋をしなかったのは
◆
・
「ひろ、緊張してる?」
電車を何度か乗り換えて約三時間半。
数年ぶりに降り立った駅で、姉さんが心配そうに聞いてきた。
「まあ、それなりに」
俺は、一人暮らしをする姉さんの帰省に同行していた。
母の住む家へは、この駅から歩いてニ十分ほど。
小学生の頃、少しの間住んでいた場所だ。
今住んでいる場所に比べると田舎ではあるものの、生活に必要な店や施設はたいてい近くにあり、暮らしやすい町。
入り組んで迷いそうな住宅地の一角に、その家はある。
「ひろはここにいて」
家の前まで来て、姉さんが言った。
俺が来ることは伝えていないそうだ。伝えたら、絶対来るなと電話で怒鳴られる可能性があるから。
それならいっそ突発的に来て、強制的に話す場を設けようということになったのだ。
姉さんはゆっくりインターホンを押した。
「母さん?あたし。礼菜」
しばらくしてガチャリとドアが開いた。
そこから出てきた母親は、俺の記憶よりもずっと老け込んでいた。
・
「ひろ、緊張してる?」
電車を何度か乗り換えて約三時間半。
数年ぶりに降り立った駅で、姉さんが心配そうに聞いてきた。
「まあ、それなりに」
俺は、一人暮らしをする姉さんの帰省に同行していた。
母の住む家へは、この駅から歩いてニ十分ほど。
小学生の頃、少しの間住んでいた場所だ。
今住んでいる場所に比べると田舎ではあるものの、生活に必要な店や施設はたいてい近くにあり、暮らしやすい町。
入り組んで迷いそうな住宅地の一角に、その家はある。
「ひろはここにいて」
家の前まで来て、姉さんが言った。
俺が来ることは伝えていないそうだ。伝えたら、絶対来るなと電話で怒鳴られる可能性があるから。
それならいっそ突発的に来て、強制的に話す場を設けようということになったのだ。
姉さんはゆっくりインターホンを押した。
「母さん?あたし。礼菜」
しばらくしてガチャリとドアが開いた。
そこから出てきた母親は、俺の記憶よりもずっと老け込んでいた。