隣の不器用王子のご飯係はじめました
「お帰りなさい。……ずいぶん派手な格好してるわね。漫画描いてるんだかなんだか知らないけど、大学はちゃんと行ってるんでしょうね」
「行ってるよー。それに、この格好も大学の中じゃ地味な方だしー」
久々に聞いた母の声。
懐かしさが押し寄せてくる。
「母さん。今日ね、こいつも連れて来たんだ」
早く中に入れと急かされていた姉さんが、こちらを振り返った。
それを合図に俺は、恐る恐る母の前に姿を現した。
「浩……斗……?」
母はぐわっと目を見開いた。
「……久しぶり」
「何?何で?何しに来たの?」
「姉さんに頼んで、付いてきた」
「礼菜!」
「良いでしょ別に。家族なんだから」
姉さんは皮肉めいた笑みを母に向けた。
母はしばらく姉さんのことを睨んでいたが、やがて震える小さな声で言った。
「入りなさい。……浩斗も」
一応玄関先で追い返されるということはなく、俺は静かに息をついた。