隣の不器用王子のご飯係はじめました
「違う、浩斗は浩斗だって思おうとすればするほど、貴方があの人に見えた。顔はもちろん、佇まいや何を考えているのかわからないところもそっくり。……気が付いたら、何の罪もない貴方に八つ当たりするようになっていたの。おかしいわよね、あの人の不倫が発覚したときですらあそこまで感情的にはならなかったのに」
淡々とした口調で話している母だが、表情は本当に苦しそうだ。
「ようやく冷静になって、とんでもないことをしてしまったと思えたのは、浩斗があの人の元に戻ってしばらくしてから。……ずっと後悔していたけど、合わせる顔がなくて……正直今も、どんな顔をしてあなたを見れば良いのかわからないのよ」
「……今も、俺は父さんの姿に重なる?」
「……そうね、少しだけ。でもあの人は──」
母はゆっくり顔を上げて、ぎこちない笑みを浮かべた。