隣の不器用王子のご飯係はじめました
姉さんが俺の言葉に元気よく同意した。
「あたし、正直ひろの前で母さんの話をするのはタブーだって思ってたんだよねー。だから今回、あたしと一緒に来たいって言われて、すごくびっくりした。でも思い返してみたら、あたしが思わず母さんの話をしちゃった時、ひろがそれで不快そうにしたことなんて、なかった」
「そう……」
「結局さ、話さないと何一つ伝わらないものだよね。家族なら何も言わなくても分かり合えるなんて嘘だよ」
姉さんはそう言い切って、朗らか笑う。
俺も思わず明るい気持ちになった。が、ふと姉さんの手元を見て気が付く。
……姉さん、すごく良いこと言ってるけど……何かメモしてないか?
「姉さん、そのメモ帳何?」
「へ?な、何のこと?」
「まさかと思うけど、漫画のネタ用に今までのやり取りメモしてた……とかじゃないよね?」
「ままままさか!次回作は家族の感動物語にするのも良いなあ、なんてこれっぽっちも!」
「やっぱり……」
「そーんなことよりっ!ひろ、母さんに聞きたいことあるって言ってたじゃん!聞いちゃいなよ!」