隣の不器用王子のご飯係はじめました



「じゃあ何で“ひろ”なのかっていうと……ふふ、駄洒落みたいって思うかもしれないけど、……誰かにとっての“ヒーロー”みたいな存在になって欲しいっていう思いで付けたのよ」

「ヒーロー……本当に駄洒落みたいだ」



思ってもみなかった由来につい笑ってしまう。

だけど、誰かにとってのヒーローか……。悪くはない。



「母さん!あたしは?」



姉さんがはいっと勢いよく手を上げた。


母はメモ帳を裏返して、今度は“礼”という字を書く。



「礼菜は初めての子で、しかも難産だったから……。生まれてきてくれた感謝の気持ちを忘れないように、そして貴女自身も感謝することを忘れない子になって欲しいと思って“礼”の字を使ったの。“菜”は考えたのがちょうど菜の花の時期だったからね」

「ほえぇ……知らなかった」

「ま、大学まで行かせてあげた感謝の気持ちも忘れて、漫画ばっか描いて平気で単位落すような子になっちゃったけど」

「か、感謝してるって~」




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