隣の不器用王子のご飯係はじめました



……本当に、来てよかった。

まだまだぎこちなくはあったが、母との間に確実に以前の雰囲気を取り戻しつつあった。




『結局さ、話さないと何一つ伝わらないものだよね』


姉さんの声が蘇ってくる。昨日から何度も何度も、頭の中に留まって離れない言葉だ。



心の中で気持ちをくすぶらせていて、良いことなんて一つもない。

そう思うと、俺の中である思いが大きく膨れ上がってきた。



三時間半の電車の旅。

一つの揺るぎない決心に、ずっとそわそわと浮つく気持ちが抑えられなかった。

車窓からの景色を眺めながら、静かに目を閉じる。



──今すぐ小野山さんに会いたい。

そして、この気持ちをちゃんと伝えよう。



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