隣の不器用王子のご飯係はじめました
「遠坂くん、どうしてここに?レナさんなら実家に帰ってるはずだけ……ど……っ⁉」
……一瞬、自分の身に何が起きたのかわからなかった。
遠坂くんは、駆け寄った私の背中にいきなり手を回し、ギュッと抱き寄せてきたのだ。
「と、遠坂くんっ⁉」
名前を呼んでも反応せず、彼は無言のままひたすら私を抱きしめ続ける。
なななな何⁉この状況!
わけわかんない。ドキドキしすぎて目が回る……。
ていうかこんなに密着してたら、私の心臓の音なんか簡単に伝わっちゃいそうなんだけど。
恐らく、数十秒はそのままの状態で静かに時間が流れた。
遠坂くんが呼吸を整えるように、深く息を吐く音だけが耳元で聞こえる。
やがて、私のことを抱きしめる力がわずかに強くなった。
「俺……」
遠坂くんがようやく口を開いた。
耳元で囁かれる声に、私の緊張が最高潮に達する。