隣の不器用王子のご飯係はじめました
あり得ない、というように目を見開く遠坂くん。
私はこくこくと必死にうなずく。
「俺、てっきり小野山さんの好きな人って杉野のことだと思ってた。……その、杉野が小野山さんに一回告白したってこと聞いてたし。あいつ脈ありだと思うとか言ってたし……」
「杉野くんのことは、この前お断りさせてもらったの」
「そうだったんだ……」
遠坂くんは、力が抜けたように深く息を吐いてうつむいた。
そして、しみじみと呟いた。
「……知らなかった。好きな人に気持ちを伝えるのって、こんなに勇気がいるんだ」
遠坂くんはこれまで、本当にたくさんの人に思いを寄せられ、告白されてきた。
その人数が多すぎたあまりに、煩わしく思ったりもした。
だけど今、それを後悔しているみたいだ。