隣の不器用王子のご飯係はじめました
何が起こったのかわからなくて、私は馬鹿みたいにぽかんとすることしかできなかった。
皆は、それまでの険しい表情とは打って変わって、にこやかに次々とお祝いの言葉を言ってくる。
「ごめんね驚かせて。私たちは全員、遠坂浩斗ファンクラブのメンバーだったの。今までどんな子にも靡かなかった遠坂くんにとうとう彼女が、しかもそれが由梨ちゃんの親友だなんて……これはお祝いするしかないって思ったわけ!」
「は、はあ……」
「ここにいる私たちは、推しである遠坂くんの幸せを願っているメンバー。これからも小野山さんのこと応援してるからね!」
「あ、ありがとう……」
テンションがめちゃくちゃでよくわからない。
何故かお祝いの品として渡されたホテルの売店で買ったと思われる菓子パンを両手に、私は自分の泊まる部屋に戻ってきたのだった。
……回想終わり。
少しの怒りとかなりの恥ずかしさで顔を上気させる私に、由梨は堪えきれなくなったように声を上げて笑い出した。