隣の不器用王子のご飯係はじめました



今使ってるのよりもう一回り大きいフライパンが欲しいんだよね。あとはキッチンペーパーも補充しておきたい。

店のロゴが入った紙袋を持って戻ってきた由梨にそう伝えると、「やっぱり主婦ってる~」と笑われてしまった。



「えっと、フライパン売ってるのは確かあっちの方だったかな」



広くてどこに何が売られているのかがなかなか覚えられない。

私はきょろきょろとキッチン用品売場を探しながら由梨と並んで歩く。


すると、由梨が突然私の服をちょいちょいと引っ張った。



「ねえ在花、あれって……」



妙に緊張した声だ。私は不審に思って由梨が指さす方を見た。

そっちの方に何かがあるようには見えなかった。さらに目をこらすと、遠くの方にカップルと思しき男女の姿があった。

知り合いなのかな?と思って見ているうちにようやく気が付いた。


……男の子の方、遠坂くんだ。



「だ、誰なのよあの隣の女」



由梨は私の手をギュッとつかむ。



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