隣の不器用王子のご飯係はじめました
大学モードのときに近くですれ違ったことはなくて、ただ遠くで見ただけではあるけど、そういえばその時も今みたいに流行りを無難に取り入れた感じの服を着ていたっけ。
確かファッションのことはよくわからないからマネキンの服をそのまま買っていると話していた。
そして今、目の前の彼女が着ている服に見覚えがある気がしたけど、あれはさっき由梨といた店のマネキンが着ていたものだ。
そう思うと先ほどまで気にしていなかったところにもどんどん目がいく。
彼女が今楽しそうに手に取っているのは、今日発売されたばかりのサトウレナの新刊だ。
「ちょっと在花!そんなに近づいて見てたら怪しいって!」
由梨が小声で言って私の手を引っ張る。
いつの間にか私は、二人まであと数メートルというとことまで近づいていた。
だけど、由梨の忠告は少し遅かったようで……。
「あれ~?ありりんじゃん!こんなとこで会うねんて奇遇だねえ。お友達とお買い物?」