隣の不器用王子のご飯係はじめました
切ったナスを多めの油で焼いて、生姜を加えためんつゆで煮る。
これが美味しいんだよねえ。とろっとしたナスがめんつゆによく合うんだ。
あれこれ夕飯のメニューを作っているうちに、由梨のカップケーキが焼ける甘い匂いもしてきた。
「ちょっと焦げちゃったけど上出来。良かったら在花も食べて」
満足げにうなずく由梨が、少し歪な形のものを私にくれた。
出来立ての焼き菓子って本当格別だ。
表面はサクサクして中はふんわり。刻んだ板チョコもとろりとしていて甘味が口いっぱいに広がる。
「すっごく美味しい」
「本当?」
私の言葉に由梨はぱあっと顔を輝かせる。
「在花にそう言ってもらえたら安心ね。……それにしても、遠坂くんが隣の部屋にいるのよね……食べてもらえるかな。緊張してきた」
由梨は大きく深呼吸をして、大事そうにカップケーキを手に取る。