隣の不器用王子のご飯係はじめました
「在花も付いてきてくれる?」
「もちろん。私と一緒にお菓子を作ってて、たくさん出来たからおすそ分けしに来たってことにしよ」
「わかったそうする」
神妙な面持ちでうなずいた由梨だったけど、私が「じゃあ行こう」と言うと、まだ心の準備ができていないと慌てだした。
埒が明かないので、私は半ば引っ張るような感じで由梨を連れて部屋を出て、レナさんの部屋のインターホンを押す。
すぐにドアが開いて遠坂くんが出てきた。
隣で由梨がひゅっと息を飲むのが聞こえる。
「小野山さん。と……」
遠坂くんは私の隣に立つ由梨を見て首をかしげる。
由梨が一歩前へ出て緊張気味の声で言った。
「あ、あの!わたし、在花の友達で藤田由梨です!こ、これ在花と食べようと思って作って余っちゃって……えっとだから、良かったら遠坂くんに食べて欲しいですっ!」