隣の不器用王子のご飯係はじめました
「ねえありりん。あたしはこっちの甘~い香りがする物も気になるんだけど~」
レナさんがそう言って指さすのは、由梨が作ったカップケーキの入ったタッパー。
メガネにぼさぼさ髪のオフモードのレナさんは、やっぱり昨日見た女優並の美女とはすぐには結び付かない。
「それは私の友達が作ったんです」
「あ、もしかして昨日ショッピングセンターでありりんと一緒にいた美人さん?」
「あ、はい。そうです」
「へへへ。美人女子高生が作ったお菓子とは貴重ですなあ。じゃあ一口味見を……」
カップケーキにすーっと手を伸ばすレナさん。
その手を遠坂くんが軽く叩いた。
「姉さん、デザートは後」
「ちぇっ、けち。でもひろはもう食べたんでしょ?」
「俺は持ってきてもらってすぐに食べたから良いんだ。甘いモノ先に食べて夕飯食べなかったら栄養偏る」
「もう。ひろってばお母さんみたいなこと言うんだから」