隣の不器用王子のご飯係はじめました
「いや、俺は小野山さんが作った……」
「え?」
「……そういえば、このカップケーキ持ってきてくれた人の名前、もう一回教えてもらえない?」
「由梨のこと?藤田由梨だよ。あれ、私と同じクラスなんだけど知らなかった?」
由梨は美人だから、遠坂くんほどでないにしても、うちの高校では有名なはずなんだけどな。
私が首をかしげると、遠坂くんは苦笑いした。
「さすがに隣のクラスの人まで把握してるわけじゃないから。昨日会った小野山さんの友達ってことで、一応顔は覚えてたけど」
「……あ、そっか。そりゃそうだよね」
いくら有名でも、あまり周りと交流を持たない遠坂くんが由梨のことを知らなくても別に不思議じゃないか。
そう納得したけど、私は遠坂くんとここで初めて会ったときのことを思い出して、あれ?と思う。
『小野山在花さん、でしょ?1組の』