隣の不器用王子のご飯係はじめました
先生に名前を呼ばれて、私はパッと前を向く。
やばい。全然聞いてなかった。いや、たぶん聞いててもわかってないけど。
「えっと……」
たらりと冷や汗が流れる。
しんと静まり返った中、正直に「わかりません」と言おうと腹をくくったとき、隣の席からノートの切れ端を渡された。
そこには書きなぐったような字で“5”と書いてあった。
「えっと、“5”、です」
「正解。ここに5が入るから、今度はこの式のXを全部5に置き換えて……」
ほっ、良かった……。
その後は特に当てられることもなく、無事に数学の授業が終了した。
先生が教室から出て行ったのと同時に、私は隣の席の救世主に深々と頭を下げた。
「杉野くん……!さっきは本当にありがとう!」
昨日の席替えで隣の席になった、杉野簾くん。
サッカー部のエースで、学業成績も優秀。