隣の不器用王子のご飯係はじめました
これまでも作った料理をレナさんに何度かおすそ分けした。
持っていくたびに喜んで食べてくれるから、私としても作りがいがある。
私は片手鍋に移した肉じゃがをもう一度温め、自分の部屋を出た。
……あ、先に連絡しておいた方が良かったかな?でも渡すだけだし別に大丈夫だよね。
レナさんは漫画を描くため、大学は講義さえ終わればさっさと帰ってきているらしく、私が学校から帰ってきたときには大抵部屋にいる。
もう外に出ちゃったし、そのまま行っちゃう方が早いでしょ。
私はそう納得して、隣の部屋のインターホンを鳴らした。
しばらくすると足音が聞こえて、ガチャっと扉が開く。
「あ、レナさんこんにちは。肉じゃがを作ったんです、け……ど……」
……言葉は最後まで続かなかった。
ドアの向こうから顔を覗かせたのは、レナさんではなかった。
その人物を見て、10秒ぐらい思考が停止する。