隣の不器用王子のご飯係はじめました



えっと、まさか知らないうちにレナさん引っ越して代わりに遠坂くんが引っ越してきたとか?

……いやいやまさかね。レナさんが何も言わずに引越しちゃうなんて。


私はまたそっと玄関を出た。

足音をたてないようにそっと隣の部屋の表札を確認する。




“佐藤”


良かった。間違いなくレナさんの部屋だ。

でも、それならさっきは何で遠坂くんが……。



中の様子を知りたくて、そっと耳をすませる。


と──


ガチャり、と音がして目の前でドアが開いた。


そこにはやはり遠坂くんが立っていて。



「何か用?」



相変わらず感情の読めない表情で私を見つめている。



「えっとあの、隣の部屋の者なんですけど……この部屋って……」



ど、どうすれば。

遠坂くんのことは由梨から毎日のように話を聞いて一方的に知ってはいたけど、こんな目の前で見るのは初めてだ。


一人で慌てふためいていると、部屋の奥から聞きなれた女性の声が聞こえてきた。



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