隣の不器用王子のご飯係はじめました
私はそのお言葉に甘えて、遠坂くんに体重を預けながら恐る恐る立ち上がる。
……保健室、こんなに遠かったっけな。
遠坂くんが来てくれたことで、先ほどよりさらに視線が増えている気がする。
支えられながらゆっくり歩いているとなかなか前に進まない。
「小野山さん、ちょっとストップ」
数メートル進んだところで遠坂くんが言った。
「ごめん、嫌かもしれないけど我慢して」
「え?……うわっ!?」
次の瞬間、身体がふわりと浮いたような感覚がした。
膝のうらに触れているのは、遠坂くんのしっかりとした手。
そして、遠坂くんの綺麗な顔がすぐ近くにある。
──いわゆる、お姫様抱っこをされている状態になっていた。
「きゃあああ!遠坂くんがああ!」
「何なのあの子!?遠坂くんにお姫様抱っこされるとかうらやましすぎるんだけど!?」
「本物の王子様は存在したんだ……」
「てかいつも冷たいのに怪我した子には優しいとか……最高……好き……」