隣の不器用王子のご飯係はじめました



「待って」



遠坂くんはお弁当を持った私の手をガシっと押さえた。



「あの……小野山さんが作った弁当の方がいい……です」



真剣な眼差しでそう言われ、私は思わずドキリとする。



「え⁉だ、だけど作ったって言っても、昨日の夕ご飯の残り入ってるし、他のおかずも作り置きして冷凍しておいたやつだし……。パンの方が美味しいって!」

「“お礼”なんでしょ?それなら俺に選ばせてよ」

「でも……!」

「最初くれるつもりだったじゃん。俺はコンビニのパンより小野山さんの料理の方がずっと嬉しいんだけど」



な、何その殺し文句……!

そんな真剣な表情でそんなこと言われたら渡すしかないじゃん!


私はギュッと唇を結んで、引っ込めていた保冷バッグを差し出す。



「それなら……ど、どうぞ」

「やった、ありがとう。いただきます」



遠坂くんは、さして表情は変わっていないものの、どこか嬉しそうにお弁当を受け取った。



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