隣の不器用王子のご飯係はじめました
だからきっと……私がここから誰を応援したとして、クラスメイトたちからはわからない。
そう思うと、居ても立っても居られなかった。
「小野山さん?」
先生が怪訝な顔をした。
私がクーラーの効いた保健室の窓を勢いよく開けたからだ。
私は外の熱い空気を胸いっぱいに吸い込む。そして叫んだ。
「遠坂くんっ!!頑張れーーっ!」
普段出さないような大きな声。
それでも遠坂くんに届いたかどうかは微妙だ。
でも──
『おおー⁉二位の選手、2組が今、一位の1組を抜かそうとしています!』
放送部のかなり興奮した様子の実況が聞こえる。
杉野くんと一定の距離があったはずの遠坂くんが、追い上げてきたのだ。
お願い、頑張って遠坂くん……!
ゴールテープがひらりと舞った。かなりの僅差だった二人。どっちが勝ったのかはよく見えない。
耳をすませて放送を待つ。