隣の不器用王子のご飯係はじめました
体育祭の日、この学校の王子様にお姫様抱っこで運ばれていった女子生徒の噂は、瞬く間に広まっていった。
その時の様子を実際に見ていた人の中には、もちろん私のことを知っている人もいて、一躍有名人になってしまった。全く嬉しくない。
これが以前と変わってしまったことの一つ。でもこれは、少し……いやかなり迷惑だけど、それでも学校に来るのが嫌になるほど辛いわけじゃない。
実を言うと、私の日常の中で変わってしまったことはあと二つある。
そしてそのうちの一つは、残りの二つと比べ物にならないぐらい辛いものだった。
「ねえ在花、今日の放課後さ……」
帰り支度をしていると由梨の声が聞こえて、私は反射的に立ち上がる。
「ご、ごめん。今日も急いでて!じゃあね!」
「え、うん……。じゃあまた明日……」
私はまともに由梨の顔を見ることなく、逃げるように教室を飛び出した。