ネトゲ女子は結婚生活を楽しみたい!
ひとり【直真 視点】
有里を追いかけられなかった―――追いかける資格がないと思ってしまった。
静まり返った部屋の中に一人残された。
「力一杯、殴りやがって」
叩かれた頬が痛んだ。
自分がどれだけ酷いことを言ったのか、わかっている。
「俺と有里の子どもか」
自分の立場上、こればかりはどうにもならない。
従弟の親が起こしたクーデターは失敗に終わったが、次は俺と有里の子が担ぎ出される。
それだけは避けたい―――弟の敵になるようなことだけはしたくなかった。
異母弟が天涯孤独の身になった自分を家族として迎えてくれたことを感謝している。
母の違う自分を受け入れるのは抵抗があったはずだ。
家族として迎えただけでなく、ヤクザかチンピラのような生活を送っていた俺に足を洗わせ、大学まで通わせ、マンションの部屋を与え、自分をまっとうな道に戻してくれた。
恩義があるだけじゃない。