ネトゲ女子は結婚生活を楽しみたい!
俺の唯一の肉親だと思っている―――そこまで思って、あのアホ(づら)が頭に浮かんだ。

「家族って増えるもんなんだな」

今まで減るだけのものなんだと思っていた。
部屋のドアをノックする音がした。

「どうぞ」

「直真お兄様、有里さんが帰ったようですけど、ケンカですか?」

「まあ、少し」

「直真お兄様!叩かれた痕がっ………赤くなってっ!」

瀧平の娘は大袈裟に声を張り上げ、駆け寄ると頬に指を這わせた。

「直真お兄様、可哀想」

なにをするのかと、見ていると俺の手をとると、自分の胸にのせた。

「私なら、直真お兄様のすべてを受け入れて差し上げることができます」

上目づかいでこっちを見上げ、顔を近づけてきたが、何の感情も湧かなかった。
またこれか―――と、だけ思った。

正直、有里は普通だった。
普通なくせに腹が立つくらいにこっちが振り回される。
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