ネトゲ女子は結婚生活を楽しみたい!
「その会話内容はなんだ?」

ようやく有里は気づいたらしく、チャット画面をじっと見ていた。
そして、『これのこと?もしかして?』とどうでもよさそうに呟いていた。

「私が結婚しようって言ってるからですか?これ、結婚というより、特別なアイテムもらえるイベントのことなんですよ」

わかりますか?とクソ腹が立つ顔で俺に言った。

「相手は伊吹ですよ。名前がイブって名前の女性キャラだったでしょ?私はユーリ!強くてイケメンな戦士!あれはお互いのセカンドキャラでメインキャラは独身です。とりあえず、イベントを見たかっただけなんで」

なにがイケメンの戦士だ。
アホらしい。

「イベントは参加していくスタイルなんですよね。お祭りっていうか」

まだ何か説明している有里を放置して、スーツを着替えようとすると、有里がスマホを取り出していた。

「撮るなよ」

「私を変態みたいな目で見るのやめて下さい」

「みたい?変態だろ。第一、俺がお前の顔とか撮ったらどう思う?」

「そんな持ち歩きたいほど好きだったんですか?」

そう聞かれて、有里の寝顔を思い浮かべた。
仕事で帰ってきて、寝ている顔を―――ただのアホ面だった。
ないな。
首を横に振ると、有里は不満そうに頬を膨らませていた。

「そこは嘘でもいいから『そうだな』くらいせめて言ってください!」

私のこと、愛してるんでしょっ!?とわけのわからない主張をしていた。

「そうだな(棒)」

「心を込めて下さいよー!」

有里は悔しそうにクッションに顔を埋めていた。
帰るなり、こんなアホな会話を俺がしていると会社の人間は思いも寄らないだろう。
はぁっと溜息を吐いた。

「もしかして、嫉妬ですか?」

「ただの勘違いだ」

有里が『またまたぁ』と指でつついた。
にやにやと笑うその顔にイラッとしたことは言うまでもない。
手を掴んでソファーに押し倒すとさすがに静かになった。

「ちょっと―――調子に乗りました」

「ちょっと?」

ふっと笑うと有里は動揺を隠そうと目を逸らす。
強情な奴だよな。
いつもそうやって意地を張る。
素直になれば、こっちも優しくしてやるっていうのに。

「あの、直真さん。私は直真さんだけですよ?」

「当り前だ」

そう答えて、有里の唇を塞いだ。

「っ……!ま、待った―――」

焦る有里を無視して、角度を変えて唇を貪った。
自由にすると『セーブしてないんです』とか言い出しかねない。
さっきの仕返しはしておかないとな?
たっぷりと。
有里が息を乱すまで―――深いキスをした。
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