ネトゲ女子は結婚生活を楽しみたい!
「ゴキブリみたいに言うな」

残りの名刺をひらひらさせながら言った。

「宮ノ入会長のおじいちゃんにあげよーかなー」

「やめろ!」

「じゃあ、帳消しで」

「わかったから、それ寄越せ」

素直に渡すと、直真さんが腕を掴んで引き寄せた。

「本当にお前は何をするかわからないな」

抱き締めると耳元で囁いた。

「俺を一人にするな。有里」

ずるい人だと思う。
だって、自分の色気をわかっていて、それをうまく使うから―――直真さんは悪い男だよね。
その綺麗な顔を両手で包みこんでキスをした。
それを待っていたかのように直真さんは何度も唇を重ね、強く抱き締めていた。
浮気じゃないことはわかっていた。
またなにか企んでいるに違いない。
直真さんは宮ノ入グループの大っぴらにできない部分を自分から引き受けている。
弟のために。

そんな優しい人なのだ―――本当は。



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