片翼を君にあげる②

「全然!次の下剋上の相手は誰で、どんな内容なのかな〜って思ってさ」

「さっすがツバサ!もう次の事かぁ〜。
ねっ?次の下剋上の時も、ツバサの側に居てもいい?ツバサの活躍、また側で見てたいんだ!」

「うん、勿論」

「ホント?やったぁ〜!」

……。
わざわざ言う必要、ない……よな?

無邪気に接してくれるジャナフを見て、俺はそう思った。


大丈夫、大丈夫。
ホノカさんが作ってくれたアイレンズのお陰で、眼帯なしでも能力(ちから)は発動せずに過ごせてるじゃないか。

それに俺は、例え自分に人を操る能力(ちから)が宿ろうとも使ったりしない。
そして、命を奪ったりもしない。
どんな能力(ちから)でも、絶対に使ったりしない。

臭い物に蓋をするように、俺は自分の事から目を背けていた。
でも、それは決して避けられない運命で……。
絶対に使ったりしない、と誓っていた筈の能力(ちから)を、後に自分が誰よりも欲する事になるなんて……。知るよしもなかった。

……
…………。

「っ!……あっつ!!
ちょ、っ……ツバサ!熱くないのっ?!」

「?……そんなに?」

運ばれて来たオニオングラタンスープを口にした俺に、同じ物を口にしたジャナフが大袈裟なくらいに驚く。

「そういやツバサ、この前のラーメンもアツアツのまま食べてたもんね〜」

「ははっ、ジャナフが猫舌なだけだろ〜」

そんな風に会話して、普通にして……。
自分の中に生まれ始めている違和感に、気付かないフリをしていた。

今はただ、最初の第一歩をクリア出来た喜びを感じていたかったんだ。
< 106 / 262 >

この作品をシェア

pagetop