片翼を君にあげる②

9月初旬ーー。

「ほらほら!ライ君、早く早く〜イルカショー始まっちゃうよ!」

無邪気に前を駆けていた彼女は、歩みの遅い僕の方を振り返って、手招きしながら可愛らしく微笑った。

今日は僕と彼女の付き合って半年記念。
付き合って初めてデートした隣街の水族館にもう一度行きたいと言う彼女のリクエストで、ここに来た。

元気で明るくて……。卒業を待たず突然学校を辞めて、夢の配達人の調査員になるって言い出した僕を責める事も、「何で?」とも問わず、ただ背中を押してくれた優しい彼女。

可愛いと思った。
告白された時は、正直迷ったけど……。一緒に過ごした時間は本当に楽しくて、これが恋だと、思いたかった。
一緒に居る時間を重ねて、想い出を増やしていけば、いつか友達以上の好きに変わると思ってた。

……けど、…………。

「ーーごめん。
やっぱり、友達以上に想えない。別れてほしい」

……
…………僕は、彼女に別れを告げた。

……
…………。
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