片翼を君にあげる②
「……別れた」
「え?」
「別れたんだ、さっき」
「……。っ、えぇ……ッ?!」
隣に座って報告すると、姉は眠気が一気に吹き飛んだようで目をぱちくりしながら僕を見つめる。
その表情は何か言いた気だったけど、こういう時程、姉は決まって自分からは聞かない。
「そう、なんだ……。
あ、喉乾いてない?麦茶飲も〜!」
普段は明るくて話好きってイメージだけど、ちゃんと相手の気持ちを考えていて自らズカズカ踏み込んで来たりしない。
微笑ってソファーから立ち上がると、冷蔵庫に行って僕の分の麦茶もコップに注いで持って来てくれた。
「なんかね、違ったんだ」
「!……え?」
「彼女と付き合ってるの。
楽しかったんだけど、何か……違ったんだ」
「……」
僕がそう言うと、コップをテーブルに置いて姉はまた隣に座ってくれる。そんな姉を見て、もう一度花火大会の日の事を思い出した。
ツバサを想って、言えない気持ちを堪えて……。辛い筈なのに、大切に大切にしている姉。
その姿を見て、僕は今の彼女に恋をしてるって言えなくなった。
それから、ツバサの事も改めて考えて……。
レノアの為に、大国の王子に勝負を挑む姿を見て、僕は今の彼女にどれ程自分を賭けられるんだろう?って、思った。
レノアも、幼い頃からの想いをずっと変わらずに大切にしている。
遠距離恋愛で離れていても、会えない時間がどれ程長くても、ずっとずっとツバサを想って待ってた。
世の中には色んな恋愛の形がある事は分かってる。
けど、本当に恋してる三人を見ていたら、このままじゃいけないと思った。
「……僕には、まだ本当の恋は難しいや」
微笑ってコップを手に取ると、麦茶を一気に飲み干して立ち上がる。
「あ〜!何かお腹空いてきたな〜。姉さん、今日の夕飯何にしよっか?」
気持ちを切り替えてそう声を弾ませると、姉も麦茶を一気に飲み干し、ソファーの上に立って言う。