片翼を君にあげる②

「っ、……ツ、ツバサ〜。
ちょ、ちょっと待ってぇ〜……」

傾斜のキツい山道の登り坂。
ボクは息を切らしながら重い足を必死に前へ前へと運ぶ。
しかし、頑張っているものの、なかなか縮まらない彼との距離に思わず待ってほしいと声を掛けた。すると、振り返ったツバサは歩みを止めて待ってくれる。


何故に突然、山道を登る(こんな事)になっているのか?というと……。全てはある夢の配達人さんの一言から始まった。

『私の金バッジが欲しければ、この山にあるお宝を持ち帰って来なさい!』

そう言って、山の地図を見せながらツバサに言ったのは夢の配達人金バッジのシャロンさん。
この言葉を聞いてすでに読者様は察していると思うけど、これがツバサの二つ目の下剋上。つまりシャロンさんは、今回の下剋上の相手だ。

シャロンさんは夢の配達人では珍しい女性で、見た目は金髪を輝かせた色気溢れるお姉様。
露出溢れるヘソ出し、そしてガッツリとスリットが入ったスカート姿を見れば、彼女の特技が甘い誘惑(ハニートラップ)である事はほぼ間違いないだろう。
そんな女性が次なる下剋上の相手と知って、正直ボクはツバサが危ない!(食べられちゃう!)って思って、かなり警戒したよ。

でも、なんとビックリ。
シャロンさんが下剋上として出してきた内容は宝探し。
ツバサが歳上のお姉様にあんな事やこんな事をされなくて安堵したと同時に、宝探しなんて事もするんだ〜って、ちょっと意外だった。

「大丈夫か?ジャナフ」

「っ……ご、ごめんね〜。足手まといで……」

やっとツバサの側まで来たボクは、歩みを止めて膝に両手を着きながら呼吸を整える。

ツバサは本当にすごい。
一見全然体力なさそうなのに、昼過ぎから歩き通しで約三時間。今も息を全く切らしてなければ、汗もほとんどかいていない。
それどころか、何か相変わらず良い匂いするし。今日はスーツ姿じゃなくて、少しブカッとしたラフな"パーカー"って言う被り物が着いた服装がまた可愛い……。

ーーじゃなくて!
……ああ、もうどうでもいいや。

前回の下剋上の一件以来……。いや、ツバサを好きって自覚して以来、以前よりまた一段と彼が輝いて見える。可愛くって、カッコ良くって、仕方ないんだ。
それに……。
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