片翼を君にあげる②
「全然、足手まといなんて思ってないよ。
こんな山の中、正直来たくなかったけど……ジャナフが一緒だから、何だかキャンプみたいだな!」
そう言いながらお水の入った水筒を笑顔で渡してくれるツバサ。
何なの、もう。
少しくらい、嫌な表情してくれてもいいのに……。
曇りがなくて、本当に綺麗で、参っちゃう。
さっきまで疲れで胸が息苦しかったのに、今は違う。ツバサの優しさに触れて、キュンッて甘く締め付けられるんだ。
「日が傾くまでにもう少し進んでおきたいんだけど……。頑張れるか?」
「ん?」って首を少し傾けながら、ツバサは右手をこちらに差し出す。
ボクは水を飲んで水筒をしまうと、その手を取って微笑った。
「もちろん!」
今はまだまだ教えてもらったり、助けてもらってばっかりだけど、いつか絶対に自分がツバサを護りたいと思った。
……
…………。
その後。
ツバサに励まされながら険しい山道を歩いて歩いて……。ボク達は何とか、今夜休憩ポイントにと定めていた場所まで辿り着く事が出来た。
火を起こして、簡単な料理を作って、ってやってるとツバサの言う通り本当に下剋上で来ていると言うより遊びに来てるみたいで、何だか楽しいひと時。
そこで僕は、ずっと聞いてみたかった質問をした。
「ね、ツバサはさ。レノアーノ様のドコが好きなの?」
「……え?」
ツバサとレノアーノ様が幼馴染みで、子供の時によく一緒に遊んでたって話は以前に聞いた。でも、彼女のお母さんがアッシュトゥーナ家に嫁ぐ事が決まって、離れ離れになってしまったって。
「レノアーノ様の美しさは知ってるし、ボランティアとかしてて評判が良いのも雑誌とかで見て知ってるけど……。ツバサは、何でレノアーノ様が好きなの?」
なるべく平然を装って、ドキドキが表れないように尋ねた。
どうしても聞いてみたかった。
同性である自分が同じ土俵に立てるなんて最初から思っていないけど……。聞いてみたかったんだ。
すると、聞いて良かったって、快く思えるくらいの返事をツバサはくれる。