片翼を君にあげる②

それは、言葉なんかじゃなかった。
なかなか返事がなくて、ボクが外していた目線を彼に移した時。

!!ッーー……え、?

ツバサの表情を見て、ドキンッとする。
固まって、顔を真っ赤にして。初めて見るその表情は、まさに純粋そのもの。

か、可愛い〜〜〜!!!
え、えっ?何っ?その可愛い反応〜〜〜!!

ついついその表情の彼をガン見してしまう。

「な、何で……そんな事、聞くんだよ」

「っえ?……あ、えと……別に深い、意味は…………。な、何か……ごめんね?」

ツバサの純粋が移ったようにボクも顔に熱が高まって来て、何だかいけない事を聞いてしまったような気持ちになってきた。でも、謝ってそっぽを向き熱を冷ましていると、暫くしてツバサが呟く。

「……。ドーナツ」

「!……へ?」

ド、ドーナツ???

まさかの言葉に再びツバサを見ると、相変わらず顔を真っ赤にしたままの状態で少し俯きながら、不器用な言葉が紡がれる。

「昔、チョコでコーティングされた上に中身に生クリームとカスタードクリームがいっぱい入ったドーナツがおやつで出たんだ。
……それを、美味しそうに食べてた、から……かな」

「……。へぇ……」

……。
ーーごめん、ツバサ。全然分かんない。

一生懸命答えてくれたのは嬉しかったけど、言葉が足りなさ過ぎて、正直ツバサがレノアーノ様に惚れちゃったポイントはこの時全く分からなかった(そしてボクの顔の熱は冷めた)。

後に分かるのは、ツバサは甘い物が苦手だけど、レノアーノ様は甘い物が大好きでいつも美味しそうに食べてた笑顔が可愛かったんだって事。
そしてその笑顔を見てると、苦手な甘い物が少しだけ美味しい気がしたんだって……。

そんな訳で、この時はツバサの説明ではよく分からなかった。けど、言葉よりも、彼の様子でどれだけレノアーノ様を好きなのか伝わってきたんだ。
「もうこの話はおしまいな!」って、立ち上がってご飯の片付けをするツバサは、食器を焚き火の中に落としたり明らかに動揺してた。

……参ったなぁ。
そこまで明らかに違う反応されたら、敵う訳ないよ。

レノアーノ様を特別に想っているのが一目瞭然なツバサを見て、ボクはそう思った。
そして、色んなツバサを知る事で彼との絆もどんどん強くなってる気が、してたんだ。

……
…………。
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