片翼を君にあげる②
翌日ーー。
「……さてと。ここから先は、この中だな」
「!……えっ?ここに入るのっ?!」
昨夜休憩したポイントから歩いて辿り着いたのは、なんと洞窟。
行手を塞ぐでっかい崖に、大きな怪物が口を開けたような穴が空いていて……。ここがどうやら入り口らしい。チラッと中を覗くが、薄暗くて先が見えない。
「……。
ば、化け物とか……いたり、しないよね?」
「んー……居るとしても、狼か熊じゃないか?」
「狼っ?!熊ッ……?!」
ツバサはサラッと言ったけど、ボクは想像したら怖くなってしまい顔が青ざめる。
狼や熊を実際に見た事はないけど、本で読んだり人から聞いた話ではすごく危ない肉食動物だって事は知っていたから……。
ついつい足を竦ませていると、そんなボクを見たツバサが尋ねる。
「ここで待ってるか?」
「えっ?」
「大体危険な動物は夜行性だったり暗闇が好きだから、真昼間の明るい場所の方が安全だろうし。それに、ここの方が広いし逃げ場所もある。
あ、何なら銃とかボウガンとか置いてくけど」
「で、でも……」
「地図見るとそんなに広くねぇし……。1時間〜2時間待っててくれたら戻って来られると思うからさ」
ツバサはそう言って、ボクに微笑った。
その表情からは全然不安や恐怖を感じなくて……。やっぱりツバサはすごいと思うと同時に、ボクは少し違和感を覚える。
「……ツバサは、怖くないの?」
「!……え?」
「だって、狼とか熊とか……。
あ、まさか戦った事がある、とか?」
慣れている、と言うのはおかしな表現かも知れないが、落ち着き払っている彼を見て思わずそう尋ねた。
だって、ツバサはまるで……狼や熊を危険だと、感じていないように見えたから、……。
すると、ツバサは「プッ」と吹き出して笑った。
「あははっ、まさか!
さすがにそんな任務は今まで受けた事ないし、俺はどっちかって言うと戦闘向きじゃないし。
ま、仮に遭遇したら隙を作る程度に攻撃して、怯んだ間に逃げるかな!」
「あ、……そう、だよね」
そんな彼を見て、少しホッとする。