片翼を君にあげる②
「君はツバサの良いところは、どこだと思いますか?」
ツバサの良いところーー?
そんなの、たくさんある。
思い出すだけで嬉しくなって、ボクは笑顔で答えた。
「えと、何でも出来て、頭が良くて!判断力も行動力も、決断力もあって……。それから、何より心が綺麗で優しいです!」
心が綺麗で優しいーー。
それは、ボクがツバサを1番好きな理由にも違いなかった。
でも、最高責任者が言った。
「そうです。"それ"が弱点です」
「!……え?」
「ツバサは"優し過ぎる"。
綺麗な心は、時に、そしてこれからの彼に諸刃の剣となるでしょう」
「……」
一瞬、意味不明だった。
ツバサの1番良いところ。1番好きなところ。
自分が目指す、憧れの夢の配達人像を持つ彼を否定されたようで……。言葉が、出なかった。
最高責任者は続ける。
「出身国なのですから、君はドルゴアという国が、サリウス王子がどんな人物なのか知っているでしょう?」
「……」
「ツバサの武器が優しさ。
ならば、その優しさを無視して、サリウス王子が力尽くで迫ってきたら?武力を使ってツバサを攻めてきたら?」
「……」
「間違いなく、今のツバサでは敵いません。最悪、命を落とします」
「……」
最高責任者に言われて、ボクは自国とサリウス様の事を思い出していた。
男は強くて当たり前。何よりも強さを誇り、力でねじ伏せる事が、相手を絶対服従させる為に必要な事だと、言われていた。
ボクはその考えが嫌で、理解出来なくて、それ以外の強さを求めた。
「優しさ、綺麗な心。
確かにそれはツバサの持つ最大の武器。
でも、優しいだけじゃ、護れないものもあるんです」
その言葉に、胸がズクンッて痛んだ。
好きな人の事も、自分の希望も否定されたようで、ショックと同時にこの時ボクには最高責任者に怒りの感情が芽生える。
強さは力ではないーー。
初代最高責任者のその言葉に救われて、力以外の強さを求めてここへ来た自分。
それなのに……、……。
「やっぱり、力でぶつけて来る相手には力で勝負するしかない、って……事ですかっ?」
悔しいような、何とも言えない感情が湧いて来てグッと拳を握り締めていると、それまで無反応だったノゾミさんがバッとボクと最高責任者の間に入り、静かに睨むように見てくる。
それを止めるように最高責任者はノゾミさんの肩を軽く叩き、そしてボクに言った。