片翼を君にあげる②

「決まりましたかな?」

「……はい」

瞬空(シュンクウ)さんの問い掛けに頷くツバサの手に握られていたのは、拳銃だった。
その武器選択が正しいのか間違っているのか、正直ボクにはよく分からない。

「あれって、正しいんですか?」

「正直、どれが正しい、と言う答えはありませんわ。
でも、ツバサ君は血筋なのか狙撃の腕がかなり良く、両目とも視力は2.0以上、動体視力もかなり正確です。
そう言う意味では、自分に合った武器は選べているかと」

問い掛けに答えてくれたノゾミさんの言葉に少しホッとする。けれど……。

「……ただ。瞬空(シュンクウ)がツバサ君に狙撃する隙を与えるか?と言ったら、難しいかも知れませんわね」

「!っ……」

刀身が曲がっている分普通の剣より長さが劣る曲剣は、素早い連続攻撃がいかに繰り出せるかが勝負の鍵。
それを自らの武器に選び、普段から愛用していると言う事は……。言わずとも瞬空(シュンクウ)さんが身軽で素早さを誇る武人である事が分かる。

今の自分に出来るのは、ツバサを見護る事だけだった。深呼吸して、しっかりと真っ直ぐに見つめた。
すると、瞬空(シュンクウ)さんが口を開く。

「では、勝利条件をお伝えします。
相手に「参った」と言わせるか、一定時間立ち上がる事が出来ないダウン、気絶などの戦闘不能状態。つまり、誰が見ても勝負あり、と言う状況を作って下さい。
……簡単です。ただ、それだけです」

ただ、それだけーー?

瞬空(シュンクウ)さんは表情を少しも変えずに、そう言った。
この人には簡単な事なんだと、分かる程に……。

「準備は、よろしいですかな?」

「っ、……はい」

「……。
"本当に"、よろしいのですかな?"そのまま"で」

「?!ッーー……」

瞬空(シュンクウ)さんの言葉に、ツバサの身体が離れていても分かるくらいにビクッと揺れて、また表情が変わった。まるで、自分だけが隠しておきたかった秘密がバレて動揺する、子供みたいに……。

?……ツバサ?

一瞬揺れた瞳で、ツバサがボクの方を見た気がした。
でも、ツバサはすぐに瞬空(シュンクウ)さんを引き攣った笑みで見つめながら言葉を返す。
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