片翼を君にあげる②
「撃ちなさい、ツバサ様。
私の腕を撃って、この状況から逃れてみなさい」
瞬空さんの声が、まるで自分に言われているように響いた。
「苦しいでしょう?死にたくないでしょう?
……さあ、撃つのです。その手に力が入らなくなる前に」
「!ッーー……あ、ッ……っ」
喉を締められる手に力が更に込められたのだろう。ツバサは声にならない苦しみを息に乗せて漏らす。
けれど……。
ーー……ガッ、シャーン……ッ!!
まだ意識のある、自分の意志で指の力を抜き、拳銃を地面に落とした。
ダレモ、キズツケタク……ナイ。
それと同時に。
ツバサの声が聞こえた気がして、ボクの瞳から涙が溢れ落ちる。
まるで心がシンクロしたように、ボクには痛いくらいにツバサの気持ちが分かった。
でも、ここは下剋上という戦場。自ら武器を捨て、戦う事を放棄した者に容赦はない。
「……。
それが答え、ですか。残念だ」
瞬空さんはツバサを地面に放り投げるようにして解放すると、這いつくばったまま咳き込む彼に向かって曲剣を構える。
「そんな甘っちょろい優しさならば、貴方は何も救えない。
次に目が覚めた時にはレノアーノ様もこの国も、サリウス王子のものとなっているでしょう」
ッーー……!!!!!
危険だ、と。ボクの心が騒ぎ出す。
でも、その瞬間にはもう遅い。
腰に差していた曲剣をもう一本抜いて二刀流になった瞬空さんが、あっという間にツバサの間合いに入っていた。
斬ら、れる……!!
本来刀身の部分が親指側にくる持ち方とは違い、刀身を小指側に向けた、逆手に持った構え方。間違いなく、何らかの技を瞬空さんが仕掛けてくるに違いなかった。
防御も出来ない状態の丸腰のツバサが、今それを喰らったらーー……。
今更遅いと分かりながらも、ボクはその場を駆け出さずにはいられなかった。
けれど、目に映った驚きの光景に足が止まる。