片翼を君にあげる②
曾祖父さんの趣味が読書、とは聞いた事がなかったが、これだけの本が集められ、並べられているのだから余程本が好きだったのだろう。
ゆっくりと書庫の中を歩き探索する。
中央にはお洒落なアンティークの机と椅子が設置されており、選んだ本をここで読んでいた事が伺える。
本棚を良く見てみた。
仕事に関する本。異国の文字が使われた難しい本。更に、人体や動物の身体のつくりや仕組みの事やら……様々なジャンルの本が綺麗に本棚に分けられて収納されている。
その中で、俺がふと気になったのが……。
「これは、絵本?」
ある一画の本棚だけが、明らかに曾祖父さんの趣味とは違いそうな雰囲気を放っている。
そこには、自分が幼い頃に両親達に読んでもらった絵本はもちろん、何やら本と言うよりはスケッチブックを使ったような……。そう、まるで誰かが手作りした絵本のような物もあった。
「Leon?」
一冊を手に取って見てみると、表紙絵に書かれた名前。それを見て、ピンッとくる。
「リオン、って……父さんの、父さん?」
そう、その名前は父の父。曾祖父さんの息子。つまり、自分にとって祖父に当たる人物だった。
父さんはあまり自分から自分の両親の事を話さなかったし、自分が生まれ物心ついた時にはすでに亡くなっている人達だったからこれまであまり興味を持たずに生きてきた。
能力に関しても、シャルマの方が様々な事に活用してきたみたいだからこれまで気に留めてくる事がなかったけど……。そうだ、父さんが能力を持っていたんだから、当然祖父のリオンも能力を持っていた筈。
そんな当たり前の事に今更気付き、そう思うとその祖父がどんな絵本を描いていたのかすごく興味が湧く。
もしかしたら、能力の事に繋がるヒントがあるかも知れない、と俺は中身を開いた。