片翼を君にあげる②
けれど口を開きかけて、一瞬固まる。
レノアが視線を少し下に向けた先にあるのは……。蓮葉様と繋がれた、俺の手。
「……っ〜〜!!
レノアーノ様っ、あの……これは、ッ……ですね〜!」
ツバサ〜〜〜!!!
これはマズイでしょーーーッ!!?
と、言うジャナフの心の叫び声が聞こえた気がした(眼帯をしてるから実際は聞こえていないが、表情で分かる)。
俺よりも慌てた彼は、一生懸命ワタワタしながら訳を説明しようとしてくれた。
でも、そんなジャナフを遮って口を開いたのは、蓮葉様。
「これはこれは、アッシュトゥーナ家の御令嬢。女神様と讃えられるレノアーノ様ですな?
お初にお目にかかります、わしは蓮華国当主の蓮葉。どうぞ、お見知りおき下さいませ」
「!……あ。蓮華国の、蓮葉様っ?
では、あのアメフラシで有名な……」
蓮葉様の自己紹介に、レノアは少し驚いていた。
しかし、彼女よりも周り……。先程レノアを取り囲み笑顔で溢れていた村人達の表情が一変。蓮葉様を見てザワザワと騒がしくなる。
「聞いたかよ!アメフラシだって!」
「マジかよ……あんな少女がっ?」
「村長は嫌だ、って言ったのにこの辺りを管理してる領主が頼んだらしいぜ。余計な事を……」
「ああ、恐ろしい恐ろしい……天候を操るなんて」
ーーそんなの、化け物の能力だ!!ーー
「ッーー……!!」
それ、は、小声なのにハッキリと聞こえて、俺の胸に突き刺さった。
心を読んだ訳じゃないのに、氷の刃のように、冷たく鋭く突き付けられた。
そして、それに劣らない、村人から向けられる冷ややかな視線。
俺はやっと、この村に着いてからの蓮葉様に何故違和感を感じたのか、分かった。
彼女は呼ばれてこの場に来ながらも、実は望まれていない。普通ではあり得ない能力を持つ彼女は、この村の人々から疎まれる事を知っていたのだ。
それは、過去に……。
今まで訪れた先で、蓮葉様が当たり前のように酷い扱いを受けていた事が、一目瞭然。