片翼を君にあげる②

「ふふっ、本当に仲良しね。
二人ともご両親にそっくりだから、まるでヴァロンさんとアカリさんが仲良くしてるみたいだわ」

俺の父さんと最高責任者(マスター)のシュウさんは幼馴染みで親友。だから、その妻であるホノカさんも俺の両親を知ってる。
少し前の自分ならその言葉に胸を痛めていたけど、今は違う。しっかりと今を受け止めて、一緒に微笑えるようになっていた。
すると、懐かしい瞳をしたままホノカさんが言う。

「ツバサ君、本当にありがとうね」

「えっ?」

ありがとう。
突然のその言葉に俺は首を傾げた。今日の、この場の流れからしたらお世話になったのは俺の方で、まさかホノカさんからお礼を言われるなんて思ってなかったから……。
不思議そうにしていると、ホノカさんはその疑問に答えるように話を続ける。

「夢の配達人に戻って来てくれて……。そして、ミライから白金バッジを奪う、って言ってくれてありがとう。
最近ね、久々に顔を合わせたらあの子とても嬉しそうだったの。きっと、ツバサ君のおかげ」

ホノカさんの言葉に、俺の首に腕を回していた姉貴の身体がピクッと少し揺れる。密着していたから気付けた、ほんの僅かな変化。横目でチラッと見ると、その横顔は何だか寂しそうに見えた。

姉貴……。

俺の能力(ちから)は、例え相手が希血(まれち)でなくても父さんと同じ血を分けた姉貴には効きにくい。故に、今の姉貴が何を思い、何を考えているのかは分からない。(まあ、そもそも今はアイレンズを着けているから能力(ちから)は発動しないんだけど)

「ミライはヴァロンさんから白金バッジを奪うのが夢でね。でも、それをヴァロンさんの引退によって叶えられなくて……。ならば最年少で白金バッジになる、って夢を抱いてたんだけど、怪我で断念せざる得なくて……希望を失いかけていたの。
だからツバサ君が夢の配達人になって、『ミライさんの手から白金バッジを奪う』って言ってくれた時は本当に嬉しそうだったのよ?『まだまだ、1位(トップ)で居続けなきゃな!』って」

ホノカさんは嬉しそうに語ってくれるけど、姉貴の変化に気付いた俺は複雑な心境だった。
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