片翼を君にあげる②
***

その日の夕方ーー。
俺は蓮華国から持って来ていた荷物に中にあったテントを村の片隅に組み立てると、蓮葉(レンハ)様を案内した。

「御不自由があると思いますが、こちらでお休み下さい」

「なに、良い。こんなの慣れておるわ!」

俺の言葉にそう答えると、彼女は履物を脱いでテントの中に入ると少しも躊躇なく尻餅を着いて座った。
その言葉と行動、そして荷物の中に(あらかじ)めテントが用意されていた事。
休む場所さえ用意されていない、こんな扱いを受けるのが、一度や二度ではないのを目の当たりにして、胸が自分の事のように苦しくなった。

「……それより、すまんかったの」

「え?」

「アメフラシの儀式、すぐに出来る状態であれば良かったのにのぅ……」

申し訳なさそうにそう言う蓮葉(レンハ)様。
実は到着して村長の元を訪れてから、すぐにアメフラシの儀式を行おう、と言う話になった。

しかし、出来なかった。
どうやらアメフラシの儀式が行えるのには色々と条件が必要のようで、その時はまだ無理だった。
その状況を見て村人達は、

『何だよ、何も起きねぇじゃん』
『アメフラシ、ホントなのか〜?』
『嘘なんじゃねぇの〜』

……また、汚い音を吐いていた。


「儀式さえ出来れば、さっさと済ませておさらば出来たからの。わしのせいで滞在期間が延びてしもうた……」

「ーーそれは、蓮葉(レンハ)のせいじゃない!」

思わず、感情が高まって"蓮葉(レンハ)"と呼び捨てにしてしまい、俺はすぐにハッとした。

「っ、……申し訳ございません」

駄目だ。完全に心が乱されてる。
自分と似た人間離れした能力(ちから)、そして境遇。彼女と自分を重ねてしまっていた。
徐々に自分の能力(ちから)に慣れていこうと、アイレンズからすぐに取り外しが出来る眼帯に替えてきたのに……。こんなに心が乱れていたら、とても能力(ちから)何て使えない。

まだまだ未熟な精神力の自分が、嫌になる。
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